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さゆり……
だって、そうだろ?
「ねぇねぇ、聞いて聞いて。ともちゃーん。また、拓哉ったらねー。」
お前の心には、もう、僕という存在はいないのだから……
ああ、何か、さゆりが楽しそうに他の男の名前を呼んでいる。拓哉、たしか、バスケ部の部長でさゆりの彼氏だ。頭脳明晰でスポーツも得意。顔立ちもクールで、それでいて、相手を不快にさせない人懐っこい笑い方のする人だ。一度だけ会ったことがあるな。ああ、確かにあれは良い男だ。女子にも人気があるのも納得がいく。
次元が違う。到底、僕には勝ち目が無いだろうな。
さゆりもアイツに夢中だ。完全に骨抜きにされている。
もう、僕のことなんか、昔からの古い仲の良いやつとしか見ていないんだろうな。異性とすら見られていないだろう。幸い彼女が下校、登校の時に拓哉と一緒じゃないのは、拓哉の家が僕たちとは反対の方向にあるためである。それにしても、さゆり、お前も酷いよな。僕の気も知らないで……彼氏の自慢、相談ばかりしやがって……
なんで、僕をそっとしておいてくれないんだよ……
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