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「我思う、故に我ありという言葉はどうだろう?思うからこそそこに居るなんで幼稚な発想だとボクは思うんだけどねぇ」   「……知らない」   「えっと、自我を観測する自我こそが我であるという観測のこと?」   「まあそうなるね。例え自我と呼べるものを観測しなくてもそんなものとは関係なく自分という形は存在するよね?なのにわざわざ観測しなくては自分を信じられない堕弱な精神の持ち主なんて……くくくっ!失笑に伏さずには居られないよボクは」   「……死にたい」   「いいんじゃないかな?君がそう感じたこと、彼がそう感じたこと、誰かがそう感じたこと。それらが同じとは限らないんだから。同じ事象であろうと、受け取る側にはまるで反対の意味で感じることすらあるんだよ」   「その意見には大いに賛成だね。そもそも人間という種は肉体面ではほぼ同じくせに中身、精神面の複雑化が過ぎると思うんだよ。片や命は平等だと綺麗事を抜かし同じ口で言うのさ。狼は殺せ!豚も殺せ!嫌悪を通り越して恋愛感情を抱いてしまいそうだよボク」   「……殺したい」   「…君の恋愛感情って監禁して嬲ぶり尽くした後にあえて自由にしそうだね」   「なんだよその闇思考は…これでもボクも女の端くれ、尽くして尽くして相手が嫌だと言っても尽くして勘弁してくださいと言っても尽くしきる所存だよ。具体的に言うと頼まれてもいないのに部屋を掃除したり手料理を振る舞ったり背中を流したり寝床に侵入して既成事実を作成して同棲したり」   「……逃げたい」   「ストーカーどころの騒ぎじゃないよ…」   「うふふふ…どうだろう、こんなお買い得な女性が今なら無料でお持ち帰りできるのだけど。ああ気にしなくていいんだよボクのことは君は普段どおりに生活してればあとは勝手にするから。それともオプションで首輪でも付けてみるかい?健気に尽くしてくれる女に首輪を付けて飼い主気分……新しい自分に出会えると思うよ」   「…お腹空いたー!」   「どう、と言われても…部屋を掃除してくれたり手料理を振る舞ってくれたりはむしろ歓迎なんだけど、そのあとはちょっと……ほら、ちっちゃい同居人もいるしね?あとそういう性癖は持ってないから首輪も要らないし、まあ…そういうことをしないんだったらいいかなとは思うんだけど」   「ぇ……う………こ、こう言うときは…よろしくおねがいします…だよね?」   「……ねむいー…」
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