山田の奥さん

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朝、山田から電話が入った。 『昨夜、妻の方には話をしました。』 『あ、そう。じゃあ、俺も奥さんに言わなきゃならない事があるから、後で電話するから。』 『私が話したんだからいいじゃないですか。』 『そうはいかないヨ。アンタの態度とかも知ってもらわないと。』 『わかりました。』 山田は電話を切った。 昨夜、山田との一連の会話を妻に話した。 全てを妻になすりつけ、自分だけは助かろうとしてる事… 俺は、 『ファミレスに入るなり、床に頭をこすりつけて謝るってなら、話は違ってたけど、謝罪もない、悪気もない。別に金をよこせって言ってる訳じゃねーんだ。先方にも、ウチぐらいのチビがいるんだし、アイツが誠意を見せて頭を下げるなら、終わりにしてやった事なんだ。お前の事は後回し。まずは山田に謝罪させねーとな。あんなのが教師か…』 妻もショックを受けていた様だ。 知らない土地に電話で誘導され、時には2時間近く電車を乗り継ぎ会いに行った憧れの山田先生。 男らしく頭を下げるどころか、頭すら下げず、自分を救済したとまで言われれば、納得いかないのは当然だろう。 『山田の奥さんってどんな人か聞いてんのか?』 『同じ学校の先生。』 なぁにぃ~? 奥さんも教師ぃ~? まあ、全ての教師が、悪い事をしても、ゴメンナサイが言えない人間ばかりではないはず… そんな事を考えながら、俺はダイヤルをプッシュした…
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