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『失礼しまーす。』
弁護士事務所の扉を開けた。
何だか難しそうな本が辺り一面に積み重なっている。
その本の山が、事務所を狭くしている様だ。
『はーい。どうぞー。』
奥の部屋から返事が聞こえた。
奥の部屋へ入り、深々と頭を下げる。
『はじめまして。○○運輸のぱぱです。』
『!?』
弁護士は、なぜか驚いた顔をしている。
『あの~…』
『あ、ああ、座って座って。』
優しそうなおじいちゃんって感じの弁護士。
『早速だけど、詳しい事情を話してもらえるかな?あ、ここは都庁じゃないから、ゆっくり、何分かかってもいいから、全て話してごらん。』
俺は全てを話した。
『相手は教師!?』
弁護士も驚いた様子。
『そんな奴を学校に残したらイカンなぁ。で?ぱぱさんはどうしたいの?教育の場から引かせる?慰謝料取る?私の孫の通う学校に、もしそんな教師がいたら、ゾッとするもんなぁ。』
『いや、俺の目的は、とにかく山田に土下座でもして詫びて欲しいだけです。向こうにも家庭があるし。たったそれだけで、金銭の要求もした訳じゃないんだけど、弁護士立てるみたいな流れになっちゃって…』
『ワハハハ』
弁護士は笑い出した。
『そりゃあ、あんたみたいなさ、ホストみたいな見たくれでさ、背も高い人に呼び出されれば、誰だって警戒するだろ~。私だって、あんたが入って来た時に驚いたもん。そんな髪長くて茶色くて。だから金でも取られると思っとるんだろ?ワハハハ。』
空気が少し和んだ。
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