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数日後、山田から一通の封筒が届いた。
開けてみた。
内容証明だった。
しかも、あれだけ関係ないと言い張った奥さんの名前で。
受けて立つって事か…
俺は再び、弁護士事務所を訪ねた。
『困った先生だねェ。善悪の区別がつかないの?この先生。で、ぱぱさん。どうする?』
『勘忍袋の緒が切れるってのは、こんな感じなんですかネ。とことんやってやります。』
『解りました。でも、その前に話を聞いて下さい。』
弁護士の表情が厳しくなった。
『今、裁判をしたら、あなたは勝ちます。』
『はい。』
『慰謝料も取れる。裁判費用も負けた側が持ちますから、あなたの出費は無いです。』
『はい。』
『ただ、あなたが勝っても、相手の奥さんが訴訟を起こせば、全てはご破算。あなたが奥さんと離婚しない限り、全ては時間の無駄って事です。』
『…』
『当人同士が争えば、裁判は水掛け論。証拠になるメールは、奥さんが全て消してしまった以上、裁判の長期化は免れず、場合によっては、お子さん達が晒し者になるぐらいの覚悟をして下さい。』
『それは、相手の子供達もって事ですか?』
『そうです。私が受け持ってる案件で、もうじき10年近く争ってるケースもあります。』
『解りました。少し頭を冷やして考えます。』
『私はぱぱさんが、それでもやるんだと言うなら、いつでも力になります。一人の親としても許せない教師ですから。よく考えて。』
俺は帰路についた。
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