516人が本棚に入れています
本棚に追加
/133ページ
帰宅した俺は悩んでいた。子供達には罪はない。
我が家の子供も、山田の子供も。晒し者になった事を考えると、胸が痛む。
妻が口を開く。
『どうするの?』
『どうするじゃねーだろ!お前のおかげで…俺のこの納まり切らない気持ちは、どうしたらいいんだよ!!』
『…』
『お前、いっそうの事、山田んとこに行っちまえよ!』
『やだ…』
『やだじゃねえだろ!?憧れの先生だったんだろ?山田と一緒になればいいじゃねーか!』
『パパの性格上、絶対私を許してくれないと思ってた…』
『当たり前だろ?何で山田なんだ?何で俺と面識の無い奴じゃねーんだ?浮気?結構じゃねーか。でもな、相手を選べよ!バレんじゃねーよ!』
『ゴメン…』
妻は泣き出した。
子供達が駆け寄る。
『ママをイジメルな!!』
普段は、全く痛くない子供達のゲンコツパンチ。 今日は痛い。胸に突き刺さる痛み…。
長男も次男も、泣きながら俺を殴る。
『ゴメンな。もうイジメないからさ。ママの近くにいてあげな。』
俺は電話を持って外に出た。
そして、弁護士のもとに電話をした。
『はい、もしもし』
『あ、ぱぱです。』
『考えはまとまったかな?』
『はい。色々と…お金も払わないのに良くして頂いて、ありがとうございました。』
『で、どうします?』
『やっぱり…子供達は…山田の子供達も晒し者には出来ません。やりきれないし、この気持ちをどこにぶつければいいか解らないけど、山田の事は諦めます…。』
『そうですか。それが一番かもしれませんネ。後は、あなたの家庭の問題です。きっと相手の家もあなたの家庭と同じ位苦しんでますヨ。頑張って。』
苦渋の決断だった。
怒りなんて収まらない。
こんな事なら、山田をブン殴って傷害でブチ込まれた方が良かったかも…
今も、山田は教師。何食わぬ顔で教壇に立っているでしょう。
そして今でも、俺の気持ちは晴れないまま…
しかし、この山田事件の直後、またしても我が家を大きな波が飲み込んで行くのだった…
最初のコメントを投稿しよう!