別れぬ理由③~この子を産んだら…

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ヘソの緒の中には普通、動脈がニ本、静脈が一本 あるらしいのだが、その動脈が一本無い。 普通の産院では対応出来ないとの事で、大学病院を紹介してもらった。 あるハズのものが無い。胎内で必要な栄養が行き届いてない。 結婚して十年以上経って、やっと授かった娘… 山田事件に続き、今度は娘まで… 普通には産まれて来ないと解ってしまった… 渋谷で買い物なんて、甘い夢も、音をたてて崩れていった… どうする? 産んだとして、この子は幸福なのだろうか? 大きくなるにつれ、産んでくれない方が良かったとか言わないだろうか? いじめられたりしないだろうか? 考えればキリがない。 息子達は…受け入れてくれるだろうか… 息子達… 俺は、これから産まれて来る子供よりも、今いる子供達を優先に考えるべきではないかと思った。 そして、妻と向き合った。 『産まれて来る娘が、万が一、ハンデを背負ってしまうとして、お前はどうしたいんだ?』 妻はしばらく考えると口を開いた。 『それでも産みたい。』
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