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『そうか。でも、今回は俺は反対だ。』
妻は驚きの表情を浮かべた。
と、同時に、俺の決意の程も感じ取った様だ。
家族の誰よりも、娘を待ち望んでいた俺。
お腹の中の子が、女の子と解った時、誰よりも喜んだ俺。
ずーっと名前考えては、ニヤニヤしていた俺。
そんな俺の口から、諦めろなんて言葉が出てくる
なんて、夢にも思わなかっただろうし、そんな俺がそこまで言うには、相当な決意をしているんだと思っただろう。
『この子を産んだとして、息子達はどうする?二人は、まだまだ母親が必要な時期だぞ?お前が娘に掛かり切りになったら、家族みんなが困る。まして、マンションを買って間もないし。』
『それは解るけど…』
『お前の産みたい気持ちも解る。俺だって娘は欲しい。この手で抱きしめたい。でも、現実を見て考えてくれ。俺は今、お前に対して酷い事を言ってるのも理解している。娘は欲しいけど、今、俺は息子達が可愛くて、アイツらには、普通の家庭環境で、ノビノビと育って欲しいんだ。』
妻は、しばらく考えていたが、
『解った。辛いのは私だけじゃないもんね。今回は諦める。』
と答えた。
俺は仕事を休み、大学病院までついて行く事にした。
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