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アパートの階段は愉快な音がする。
歩く人によってその音は大小さまざまで、私があるくとか細い唄を唄うのだが、和歌崎さんが歩くと穏やかだが少し大き目の声になる。
とんとんと歩くと、とんとんと返ってくる。それが好きで、私はゆっくりと歩いてしまう。
和歌崎さんは私に合わしてくれているみたいで、彼もゆっくりとした音をする。
階段二つの差でやっと彼より少し高くなれる。私は得意げに笑顔を作っていたら、急に振り返り思い出したような顔で
「ゴミ、持ちますよ」
私は慌てて顔を戻して、手を振る。
ガサリガサリと、手を動かすたびに袋がわめいた。
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