49人が本棚に入れています
本棚に追加
空の満月は雲に隠れ、人も寝静まった漆黒の闇の中、中空に大小2つの人影が、不意に現れる。
「兄さん、今日の獲物は?」
影の1つ、小さい方が片割れに聞く。
「ん、子供だな。歳は10。望みは、パパとママが仲良くなりますように。だな」
大きい影、兄の言葉に小さい影は眉をひそめる。
「……そんな子供と契約するのか?」
「仕方ないだろう。仕事だ」
「うーん……」
腕を組む。
「……気に入らないか?」
「ああ……悪いのは親の方だろう?どうして子供が死なないといけない?」
「そんなこと言って、本当は子供を殺したくないだけだろ?お前は子供好きだからな」
「なっ!違うぞ!!俺は……」
「病気を治したいっていう子を勝手に完治させたのは誰だ?」
「うっ……」
「空を飛びたいって子に一晩付き合ったこともあったな」
「……」
「どれも魂どころか、命すらもらってない」
「に、兄さんなんか嫌いだ!?」
「疑問形か」
「うわあぁぁぁぁ!!」
ポンッと軽い音を立てて消える小さい方の影。
兄は1つ溜め息をついて、
「これでアイツのせいに出来るな……」
呟いた。
最初のコメントを投稿しよう!