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木々の撓る音と枝達が発する風切り音が辺り一面を覆った。
凄まじい数の枝が四方八方へと攻撃を繰り返す。
そんな中、ルヴェンは落ち着き始めた竜巻の中から一気に飛び出た。
「ソコカァ!?」
不気味な魔石の声と共に彼に向けて一斉攻撃だ。
しかし、ルヴェンは宙をその翼で上手に滑空しながら全てをヒラリとかわす。
「ほほぅ、慣れてきたではないか小僧」
攻撃をかわすルヴェンに語りかけた黒竜は少し感心していた。
「貴方の記憶のお陰だよ、これぐらい出来なきゃ困るんでしょう? それに僕はルヴェンだって」
目の前で行われている戦闘の激しさも気にせず彼等はそんな会話をしている。
恐らく、彼等にとって目の前の魔石は取るに足らない相手なのだろう、ルヴェンはニコリとその受け答えに微笑んでいた。
宙を舞い、枝々をまるで曲芸の様に見事にかわす彼は、樹木の顔の前に辿り着く。
その顔は近くで見るととても大きく、ルヴェンの体のおよそ五倍は有るかも知れない。
「ドラゴン、オマエ! ナニモノ!?」
魔石は余りにも自分が軽くあしらわれたことが疑問で彼に向けて問う。
その声には対しルヴェンは何かを呟いていたが、言葉が終わるか終わらないかの所で右手の爪を尖らせた。
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