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先程の攻撃で右手が痺れているのだろうか、彼は左手に力を溜めてその魔石を掴む。
「中々手際が良いではないか、褒めてやるぞ、ルヴェン」
その言葉に彼はニコリと満面の笑みだ。
「やっと名前を呼んでくれたね、ありがとう。さぁ、これで楽になれるよね? このミイラの人は」
「確かに、魔石は人間の心を魅入るからのぉ。さっさと終わらせんか、ワシが力を貸せるのはもう少しの時間だけだぞ」
その言葉にルヴェンは軽く頷くと、一気に左手に力を込める。
数々の人と家族の命を奪った彼の左手は今、彼自身の正義の為に使われようとしていた。
それは償いなのだろうか、それは彼自身しか判らない事だ。
ルヴェンは瞳を閉じ更に力を増す。
「お休みなさい、安らかに眠ってください!」
最後の一声で魔石はガラス玉の様に弾け、辺り一面に眩い光の粒が舞う。
すると彼の左手にまたもやグローブが現れ、黒竜の意識が消えていった。
「ルヴェーン!」
背後から聞こえるのはエルミナの声、心配で追いかけてくれたのだろうか。
ルヴェンは振り向くと笑顔を見せ彼女に手を振るう。
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