第一楽章 第四十九小節

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「終わったか……」 一人森の廃村に残るレッツォは空を見上げた。 先程までの邪気も暗い空気も消えている。 すると彼は空中でなおも演奏を続けるハーモニカを手に取り、その演奏を止める。 楽器の横で形成されていたエルミナを守る結界は消え、金色の光も消えた。 「さ、こっちはこっちの仕事だな」 そう呟くと彼はまたもやハーモニカを奏でる。 今度はとても安らかではあるが、どこか寂しげなメロディーだ。 少しの演奏を続けたレッツォはハーモニカから手を放し、宙に浮き演奏を続けるハーモニカを見つめながら呟いた。 「罪無き魂よ、天上へと還れ」 すると、彼の胸の十字架が眩い光を放ち、廃村一面に巨大な魔法陣を描き出した。 その魔法陣の外周の至る所に弦楽器や管楽器、打楽器などが次々と現れ、メインメロディーであるハーモニカの演奏に合わせてハーモニーを奏でた。 すると彼は何所の言葉か分からない言語を使い唄いだす。 暫くすると村全体が金色の光と膨大なオーケストラの演奏に包まれ、破壊された家屋や木に取込まれた人間の遺体から同じく金色の光の粒が現れ彼を包んだ。
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