第一楽章 第五十小節

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魔石との戦闘から数日後の事だ、ルヴェン達三人は暫く森の中を彷徨った後、中規模の街へと辿り着いた。 背後を深い森に守られ、この街からはフェルダイの北端に位置するキラフ共和国との国境の港町へと通じる砦的な役割を担っているらしい。 街の名はクフェルと言い、周りは木の塀で囲まれ、数多くのフェルダイ兵がそれを守護している。 しかしレッツォ率いる三人は、彼自身が属する教会の政治的権力をもって門番をすんなりと通ることが出来た。 それもその筈、彼の信仰する『愛の女神』を崇拝する宗教アルカスル教は、この世界を牛耳れる力を持っていると言っても過言ではないのだ。 それは無償の愛の名の下に、ビルデンやフェルダイ、総本山の所在するキラフに多数の信者を抱き、災害時の人道的支援や世界の均衡の障害となる恐慌時の経済的支援等、国家自体もこの宗教とは切っても切れない関係にあるからだ。 クフェル自体は重厚な護りに守られてはいるものの家屋は木造、交易の主流となる街道は砂利道と、案外長閑な雰囲気を持っている。 その為か、街の住人達の表情も柔らかく優しい。大きな中央公園や数々の商店、簡素ではあるが港町から一番近い街とあって中々活気のある街だ。 ルヴェン達はそんなクフェルにあるアルカスル教の小さな教会で休養を取っていた。
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