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「へー、じゃあ私達すっごい幸運なのね! 何かうれしいな」
一通りの説明が終わった後、彼女は満面の笑みを浮かべまたもや目の前のパフォーマンスに目を向ける。
ルヴェンはそんなエルミナのはしゃぐ姿に、少し胸の辺りがざわつく感覚を覚えたが、それが何なのかということは今は考えなかった。
それもその筈、とっくにレッツォとの約束の時間は過ぎていたからだ。
「エル、ほら早くいくよ」
ともう一度彼女の肩にてを乗せた時、彼女のテンションが一気に跳ね上がった。
「うわー! 可愛い!!」
一瞬ドキリとしたルヴェンは彼女の目先に注目する。
そこには、彼女の右手に先程まで踊っていた人形が可愛い仕草でよじ登っているからだ。
その人形は木製の15cmほどで、赤い帽子と緑の服を着た安っぽいものだった。
エルミナはその人形を肩に乗せルヴェンに見せびらかす。
「ほら、ルヴェン。凄く可愛い!」
彼女の笑顔の隣で人形はルヴェンに向けて丁寧にお辞儀をし、
「ボクはテース。よろしくね!」
と、言葉を発したのだ。
人だかりから大きな歓声と拍手が巻き起こる。
凄い凄いと人々は人形遣い達を賛美し、見物料の小銭をテント前に置いてある古びたカバンに投げ込んでいた。
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