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一通りの拍手の後、人形遣い達は人々にお辞儀をし、芸の終演を告げる。
すると辺りの人だかりは笑顔を浮かべながら散り散りになり、いつもの生活へと戻っていった。
テント前に残されたのはルヴェンとエルミナ、それに人形遣い五人になった。
エルミナの肩にのったままの人形テースは、彼女の肩から離れようとしない。
「テース? どうしたのかな、もうショウはおわりでしょ?」
彼女はテースの頭を指で撫でながら問いかけると、
「やだ、ボクおねえちゃんがきにいったの!」
と、彼女の髪にしがみ付いている。
困り顔となったエルミナとルヴェンだったが、人形遣いの一人の男性から声が掛かる。
「お嬢ちゃん、ごめんよ。ソイツ人懐っこすぎるんだよ」
彼は彼女の肩のテースをむんずと掴み、自分の肩に乗せた。
「やめろよ! バルバル。ぼくはおねえちゃんといたいの!」
両手を何度も振り上げたテースは、顔の表情を変えずにバルバルと呼ばれた男に甘えている。
「お、お客さんに挨拶が遅れて申し訳ない。俺はバルバル、こう見えてまだ20歳なんだぞ?」
バルバルは身長170cmは優に超える大男だ。
体格もよく、筋肉と体脂肪のバランスが整った体つき。
顔は彼等独特なんだろうか、彫りが深くキリリとした黒い眉毛と同色のカールの利いた短髪。
行商のせいか肌は見事な小麦色だ。
表情と体つきから、彼がとても20歳には見えない、というのが現実だ。
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