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ルヴェン達は不思議に思いながらレッツォを教会まで運び、彼をベッドに寝かせた。
この日はレッツォが倒れてしまったので、ルヴェンとエルミナは人形遣い達の夕方のショウを堪能し、各々眠りに付く事に。
街全体が眠りの時間を迎え、夜風と犬の遠吠えが入り混じる頃だ。
静かに眠っていたルヴェンは急に目が覚め、月明かりしか届かない部屋の天井を見つめていた。
「レッツォさん、どうしたのかな……。明日聞いてみようか」
ポツリと呟いた彼の耳に、遠くから綺麗なリュートの音色が届く。
彼はその音色に誘われるかの様にベッドから起き上がり、薄手のシャツの上に純白のローブを羽織り教会の外に出た。
優しく揺れるランプ達の炎が静かな夜にピッタリだ。
暫く歩いてみると、教会の裏手にある小川の岸に人影が見える。
ルヴェンはゆっくりとその人物の方へと歩き出した。
すると、ルヴェンの聞き覚えのあるメロディーに乗せて、その人物はかすれた声で歌を歌っているのが聞こえる。
「この音楽……」
ルヴェンは立ち止まり、瞳を閉じて記憶を探る。
時間にして2~3分であろうか、彼は何かを思い出し口にした。
「これは……、お母様が体調の良い日に鼻歌で歌っていた音楽だ」
彼の母親は元々体が弱く、ルヴェン達三人兄弟を産んですぐにこの世を去っていたのだ。
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