第一楽章 第五十一小節

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暫くメロディーに聞き入っていたルヴェンだったが、この音楽の正体が知りたくなり歌い手の近くに足を運ぶ。 すると、男性の声がしっかりと聞こえてきたのだ。 「どこまで行こう? 君の為に。 闇に堕ちし体、取り戻す日まで。 どこまでも行こう、君の為に。 分かち合った愛の宝石求め。 どこまで行っても、君の為に。 罪を背負い生きる、我が身滅ぶまで。 いつか無くした思い出は、君が与えてくれるだろうか」 歌の主はレッツォだ。 彼は歌いながら泣き続け、歌声もひしゃがれテンポもどんどん遅くなっていた。 伴奏のリュートも涙で手が震えているらしく、コードも間違い音階もバラバラ。 「レッツォさん……」 ルヴェンはそんな彼に小さく声を掛けた。 その声に反応したレッツォは、衣服で濡れた顔を拭い優しい笑顔で振り返る。 「や、やぁルヴェン君。起きてたのかい?」 ぎこちない返事だが、ルヴェンは深く詮索しないでおこうと思った。 「大丈夫ですか? 昼間はどうしたんですかレッツォさん」 「いや、心配をかけたね、申し訳ない。少し嫌な事を思い出して取り乱してしまった。」 心配気なルヴェンとすっかり落ち着いたレッツォ。 レッツォは手にしていたリュートをルヴェンに手渡し空を見上げた。 小川のせせらぎと、夜の風が心地よく通り抜けた瞬間だ。
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