白昼夢

2/40

26人が本棚に入れています
本棚に追加
/49ページ
Point of view by A.Uehara          殺した。  コロシタ。  俺が…人を。    俺が殺した。      俺が。     「っはぁ、はぁ、はぁ…、っう、ぐ…」    胃の中身がひっくり返った。  誰にも見つからないようにずっと走っていた事しか覚えていない。    それでも、突き飛ばした瞬間の、あの眼。感覚。  全てがリアルにフラッシュバックしてくる。  ここがどこかも分からない。…禁止エリアでない事ぐらいしか。   「─上原!?」   「っひぃ!く、来るな!来るなよぉ!!」 「上原!俺だ、桜庭だよ!大丈夫だから!何もしない!」    頭を抱えていた腕をそっとはずす。  確かに、選抜でも中のよい方だった桜庭だった。  まだ間に2mほどはさんで、両手を広げ掲げている。    …何も、持っていない。   「…桜庭…」  中の良い、良い友人だという事は分かっていた。  それでも、自分のしてきたことを考えるととても信用なんか出来なかった。 「おい、大丈夫か?」    すぐに俺がどんな状態なのか見ぬいたんだろう。  でかいザックの中から水のペットボトルを取り出して、飲ませようとする。   「…いらない」   「飲めよ。でなきゃうがいしろ。大丈夫だ、何も入ってないから。ほら」    そう言って目の前で飲んで見せてくれた。  少し時間を空けておずおずと手をさしだす。  少しだけ、水を含ませうがいした。  改めて少し飲む。    …おいしい。  
/49ページ

最初のコメントを投稿しよう!

26人が本棚に入れています
本棚に追加