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Point of view by A.Uehara
殺した。
コロシタ。
俺が…人を。
俺が殺した。
俺が。
「っはぁ、はぁ、はぁ…、っう、ぐ…」
胃の中身がひっくり返った。
誰にも見つからないようにずっと走っていた事しか覚えていない。
それでも、突き飛ばした瞬間の、あの眼。感覚。
全てがリアルにフラッシュバックしてくる。
ここがどこかも分からない。…禁止エリアでない事ぐらいしか。
「─上原!?」
「っひぃ!く、来るな!来るなよぉ!!」
「上原!俺だ、桜庭だよ!大丈夫だから!何もしない!」
頭を抱えていた腕をそっとはずす。
確かに、選抜でも中のよい方だった桜庭だった。
まだ間に2mほどはさんで、両手を広げ掲げている。
…何も、持っていない。
「…桜庭…」
中の良い、良い友人だという事は分かっていた。
それでも、自分のしてきたことを考えるととても信用なんか出来なかった。
「おい、大丈夫か?」
すぐに俺がどんな状態なのか見ぬいたんだろう。
でかいザックの中から水のペットボトルを取り出して、飲ませようとする。
「…いらない」
「飲めよ。でなきゃうがいしろ。大丈夫だ、何も入ってないから。ほら」
そう言って目の前で飲んで見せてくれた。
少し時間を空けておずおずと手をさしだす。
少しだけ、水を含ませうがいした。
改めて少し飲む。
…おいしい。
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