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Point of view by K.Sanada
「英士、どうしてるだろう…」
「一馬の事探してるだろ。英士だって一馬が生きてるって信じてるからさ」
そっと肩を叩いて慰めてくれる結人に抱きついて、ふがいない自分を責めた。
望んでもいないのに、潤んだ瞳が乾く事はなくて。
結人に会って、逃げ出して。
でも、実は会う前に気付いちゃったんだ。
浜辺の方で響いた爆音。
きっと渋沢が爆弾でも持っていたんだろう。
方向と距離からしても、あの二人だとしか思えなくて。
…何も、言えなかった。
結人を探すのに走りながら泣いて、最後に笑って声をかけてくれた藤代を思い出し
て…ただ、ひたすら泣いた。
「…英士…英士…」
「…っ、ばかずま!そんなんじゃ英士だって困るだろ!もっとしゃきっとしろ!」
「っ、…ごめん」
どうすればいいのか分からなかったけど、顔を上げて背筋を伸ばして見た。
その調子、と結人が笑ってくれる。
少しでも明るくしようと、小さく笑顔を見せた。瞬間。
突然、前のほうから銃声が聞こえた。
誰かが走ってくる音が聞こえる。
「隠れろ一馬!」
ぐいっと茂みに押し込まれる。
結人が守るように前に立ちはだかった。
がさっと音がして誰かが転がり込んでくる。
お腹のあたりが真っ赤で、抑える腕も役に立っているとは言い難かった。
こちらに気付いたのか、顔を上げる。
見覚えのありすぎる顔。
「─…っ、英士!!」
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