プロローグ

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その人は意外に遠くにいるのか、なかなか近づけない。 歩いても歩いても距離は縮まらない。 ふと僕はあることに気がついた。 足音……。 僕に近づく足音が……。 僕はハッと後ろを振り向いた。 女の人……。 ドレスを着た女の人が僕に向かって真っすぐ歩いてきてる。 僕は足を止めた。 僕が歩かなくても近づいてくる。 好都合だなと思い、僕はその女性が近づいてくるのを待った。 彼女は僕の目の前まできて、足を止めた。 僕は彼女に話しかけた。 「ねえ、ここはどこなの?」 「………………。」 彼女は僕の目を真っすぐ見つめて何も言わない。 僕はまた彼女に話しかけた。 「何で何も言わないの?何でそんなに見つめるの?」 「…………………。」 彼女は黙り込んだまま、僕の目を見つめるだけだ。 僕はしょうがなく彼女の目を見つめ返した。 二人のにらめっこが続く………。 どのくらい時間が経ったのか……。 ふと彼女の口が動いた。 「そこをどいて。」 僕は驚いて彼女に聞き返した。 「君はどこへ向かっているの?」 彼女はまた黙り込んで、僕を見つめている………。 僕は溜め息をつき、道をよけた。 彼女は僕に構わずに真っすぐ歩き出した。 僕は意味がわからずに立ち尽くした。
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