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ユキは気まずいまま授業を受け、給食を食べた後マリの誘いを振り切るように急いで家路に着いた。
町から炭焼き小屋へと続く一本道を杖を引き摺りとぼとぼ歩いている。
お母さんに抱きつくこともできず、親友のマリにも打ち明けることができず、どんどん居場所を失っていく。
なんだか情けない気持ちで一杯だ。
スミレが一面に咲き乱れる花畑にさしかかる。
「おいらはポンポコリ~ン、すっとこどっこいそうたいむ♪」
へんてこな歌が聞こえてきた。
音の外れたひどい歌声。
「い~じゃんほえばーたいむ~、おいらはポンポコリ~ン♪」
歌詞もめちゃくちゃ。
誰だろう?
よく見ると、それはいつも炭焼き小屋であそんでいる狸の3兄弟だった。
ユキがじっと見つめていると、狸の兄ぃが話しかけてきた。
「ユキちんやないか」
「おおホントだ」
「どうしたユキちん」
兄ぃが話すとつられて弟2人が話してくる。それがこの兄弟のパターンだった。
「元気ないぜ」
「ほんとだ」
「どうしたユキちん」
「あの…」
「わかった」
「なにが兄」
「なにがや兄」
「恋わずらいだ」
「ええ恋わすらい」
「ユキちんが恋わずらい」
「まちがいない」
「ほんとに兄?」
「兄ぃすげー」
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