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「まあ、俺くらいになると人間を見る目も肥えてくるからよぉ」
酔い痴れるように兄ぃは云った。腕組をして、ひとりうんうん頷いている。
「やっぱ兄ぃはすげーよ」
「すげーよ」
「…ちがうんだけど」
人知れずユキは抗議する。
「ええ」
「ちがうって兄ぃ」
「ちがうって兄ぃ」
「そんなはずないぞ。なんかのまちがいじゃないか、ユキちん?」
ユキは首を横に振る。
「何かまちがっとらんか、ユキちん?」
食い下がる兄ぃ。
何を根拠にまちがいだと主張しているのかよくわからない。
「ユキちんちがうって云うとるぞ」
「どうする兄ぃ」
「まあまあ慌てなさんな」
兄ぃは態勢を整え仕切り直すと、
「ゆっくり話聞こうやないか」
狸の三兄弟はユキを取り囲むとどっしり座りこんだ。
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