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「そんで兄ぃ、カナリヤはどうなったんや」
どうなったんや兄ぃ、と弟たちが聞いた。
「さぁな、それは忘れてもうた」
「兄ぃにもわからんことがあるんか」
「ちょっと待たんかい」
しばらくしてから兄ぃは云った。
「なんや、カナリヤは鳥籠から逃げたしたか、皇女さまといっしょに死んでたか、そんな感じやった思うで」
「ふ~ん、逃げよったんか」
すみれの花畑が夕日に染まる。
「おう、そろそろ陽もくれるし帰ろうや」
「そうでんな」
「そうでんな」
「また明日からがんばろう」
「がんばる?」
とユキが尋ねる。
そういえば狸はへんてこりんな歌を歌っていたのだ。
「あのさ、ひとつ聞いていい?」
「おうよ」
「なんでも聞いてくれ」
兄のあとに弟達が続いた。
「何で歌なんか歌ってたの?」
「ユキちん、知らんのかい」
「知らんのかい」
「知らんのかい」
「何よ」
「街で歌のコンクールがあるんじゃ」
「コンクール?」
「コンクールに優勝するとペンダントが貰えるんじゃ」
「ペンダント?」
「ほや、ビザンチェデパートのペンダントやで」
ビザンチェデパートのペンダント一
それはユキがお母さんにおねだりしたペンダントだった。
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