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「まあ今回の試験に間に合わんくとも、次までにうまくなっとればええじゃろ」 「駄目ッ」 ユキは大声で叫んだ。 頑なに拒否している。 「ふぉ?」 フクロウはコクンと首を傾げる。 人は何かを拒まずには生きていけない。フクロウはそれを感じとったようだった。 「ユキちゃん、儂になんか隠しとるんじゃないか」 「…」 ユキは俯いたまま何も答えない。 フクロウは細い目をさらに細め、ユキを見つめた。 「どーして急に歌を教えてほしいなんていうたんじゃ、ユキちゃん」 「それは…」 「それは?」 「…」 「いいから云うんじゃ」 「コンクールがあるの…」 今にも消え入りそうな声でユキは云う。 「コンクール?」 ユキはフクロウにすべてを打ち明けた。 ポルタ神殿で行なわれるのは歌の試験ではなくコンクールであること。その賞金が自分の欲しかったビザンチェデパートのペンダントであること。コンクールで優勝すればお母さんがよろこんでくれると思ったこと。
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