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ユキは一本杉を見上げた。 杉の木の枝、枝、枝。 そこには老いたフクロウがとまっていた。 ユキはおでこに人差し指をあて首を傾げる。 「はにゃ」 よぼよぼのフクロウはユキを見つめる。 間違いないあれだ。 でも、さっきのは女の人の声だったような…。 優しさを包みこむような誇り高きソプラノ。あの声の主は本当にこのフクロウなんだろうか。 ユキはフクロウを見上げた。 なんとなく。 違うような。 云い表しがたい違和感が残る。 フクロウがそこにいるのにいないような、あるべきはずの大切な何かが欠けてしまったかのような、そんな感じ。
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