CITRUS LOVE~シトラスラブ~

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あたしは最終着信履歴を表示し、そのまんまプッシュした。   トゥルルル…   何度か呼び出し音が鳴ってから相手が出た。   「もしもし葵?何処にいるの?今練習終わったとこなんだけどさ、まだ学校にいる?いるなら一緒に帰ろう。」   「先輩…。」   胸が苦しい。あたしがこれから言おうとしてることは、先輩への裏切り。   気付けばすぐ目の前まで賢悟が来て心配そうな顔であたしを見つめてる。   「葵?どうした?」   先輩もあたしの様子がおかしいことに気付き、声のトーンが落ちている。   あたしは一旦目を閉じて、深呼吸しても尚、震える唇を思い切って開いた。   「先輩…あたしと別れて下さい!」   数秒間、無言の時が流れる。言った…。ついに言ってしまった。 ふと目の前の賢悟を見ると、目が真ん丸に見開かれている。   「ちょちょちょっ!ちょっと待てよ!!悪い冗談だろ!?なぁ?葵!」   「ごめんなさい!あたし、本気です。先輩…本当にごめんなさい…。」   「あっ!もしかして最近俺がイライラしたりして八つ当りしたのをまだ怒ってるのか?なら謝るよ。」   「違うんです! あたし、自分が本当に好きな人が分かったんです。 だから、さようなら…。」   一方的に別れを告げて、あたしはそのまま携帯の電源も落とした。 真っ黒になった液晶画面に雫がポタリと落ちた。 あたしはいつの間にか泣いていた。   その時ふいに、あたしの体は温もりに包まれた。 賢悟が優しくあたしを抱き締めてくれている。   「葵…。辛い思いさせてごめん。でも葵の素直な気持ちが聞けて嬉しい。」   「賢悟…。あたしズルいよね。最低!!」   あたしは賢悟にしがみ付き、声を上げて泣いた。   どれぐらいそうしていたんだろう?ようやく泣き止んで顔を上げると、賢悟の顔が近づいてきた。 賢悟の唇があたしの唇にゆっくり触れる。   あっ、ほのかに甘酸っぱい。これはレモンの味だ! 昔『ファーストキスはレモンの味』って聞いたことがあったっけ。 すると地面に置いた賢悟の鞄からC.C.Lemonのボトルが覗き見えた。   恋って苦かったり酸っぱかったり苦しかったり…とっても複雑で難しい。 でも、時にとろけそうな程甘い。   先輩とのことだってまだ片付いた訳じゃない。あたし達の未来はまだまだ前途多難だ。   爽やかな夏の風が吹いた。あたしの恋はまだ始まったばかり…-。
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