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私が『私』としての記憶を持ち始めたのはお姫様が死んでから。
その前には、『薔薇』だった頃の記憶が少しだけある。
『薔薇』は考えとか言葉とかそういうものは無くて、ただ周りを“見て”いる感じだった。
その視界はお姫様の血と涙を吸い込む度に広く育っていった。
そしてとうとうお姫様が眠りについた瞬間、まるでそれを待っていたかの様に薔薇はお姫様の躯を包み込んだ。
そうして気がつけば『私』が居た。
多分、この体はお姫様のモノだ。
瞳の色が紅く染まっている事以外は『薔薇』が見たお姫様の姿と変わらない。
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