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メラルーは立ち上がり、息を整えてゆっくりと歩を進める…。
質素な造りのドアの前に立ち、恐る恐る戸を叩いた。
(コンコン)
家の中から人の動く気配がする。
ややあって
「どなたかな?」
低い声が響き、年配であろう男が応えた。
(コンコンコン)
それに応えず再び戸が叩かれる。
(はて、こんな時間に誰であろうか)
男は油断無く家の中から気配を伺うが、辺りはシンとしている。
(聞き間違いではないようだが)
注意深くドアに手を掛け、ゆっくりと開く。
ぎぃ、とドアが軋み、ゆっくりと開いていく。
中から、60才ほどであろうか、長い白髪を無造作に後ろで束ね、顔には深いシワと見事なヒゲをたくわえた大柄な男が姿を現した。
その体には、初老とは思えないほどの鍛えこまれた筋肉を保っている。
男は辺りを見廻すが、人影は無かった。
「はて?…ちと飲み過ぎたか…」
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