第Ⅰ章 その身を守る少女

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「カレン・ルーシェ、17歳。大富豪ルーシェ家の一人娘。両親は十年前に他界。今は執事と叔父と共に暮らす……か」 商店街のある喫茶店の一角。 俺はテーブルに置かれたコーヒーカップに手をつけようともせず、茶封筒から資料を取り出し、眺める。 そして、そこに書かれていることを口に出して読み上げた。 大富豪と言えば年配者を想像していたので、17歳という文字列が目に入った時は少し戸惑った。 「ふぅ……」 俺は一つため息をつくと、手付かずだったコーヒーカップに手を伸ばし、それを一口。 そして、資料をまた元の茶封筒に丁寧に折りたたんでしまうと、その茶封筒をぐしゃりと潰した。 これも後で人目につかないところで焼却処理しなければな。 さて、今回の任務……カレン・ルーシェのボディーガードが俺の正式な初仕事と言うことになる。 物語の開幕に当たって、俺の自己紹介は不要だろう。 名前はなし、過去も抹消済み。 身分を証明する物はすべて偽物だ。 仕事仲間からはただ『24』と呼ばれている。 それは、特に何か特別な思いがあるわけではなく、『ただ何万人と受けてきた試験に24番目に受かったもの』というそれだけの意味だ。 過去何万人と挑戦したその試験に受かったのは俺を含め、たったの25人。 かなりの低確率と言っていい。 そう、俺はその試験に受かった選ばれた人間と言うこと。 ……ま、試験の内容は人に自慢できるようなものではないのだが。 「さて、と」 資料をケースにしまい込み携帯を取り出す。 最後に上司に確認の電話を入れれば、俺の任務はスタートとなる。image=120847582.jpg
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