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門をくぐり、庭をぬけ、扉を開き、過ぎた時間は実に十分以上。
マジェスタさんに連れられた俺は、たっぷりとそれだけの時間を経て、ようやく居間へと案内された。
「ではそこにおかけください。すぐにご主人とお嬢様を呼んで参ります」
そういって赤いソファに俺を座らせると、執事のマジェスタさんはきびきびとした足取りで居間を出て行く。
「……」
広い。いや広いのは屋敷を見た時点で予想はついていたが、それにしたって広い。
防犯装置はそれなりにあるのだろうが、これだけたくさんの部屋と広さがあると、万が一忍び込まれた場合にお嬢様を100パーセント守りきれるだろうか?
四六時中一緒にいるなら話は別だが彼女のプライバシーは侵せない。
あくまで俺に許されたのは任務中、この屋敷に住む部屋を与えられるだけだ。
「出雲さま、失礼します。お二方をお呼びしました」
居間の扉が開き、マジェスタさんの声。
そして彼の後ろから中年の男と年頃の少女が入ってくる。
……なるほど。カレンの叔父とカレン本人か。
二人はそのままこちらに向かってくると、俺の座るソファの正面のソファに腰をかけた。
「では私は紅茶を入れて参ります」
再びマジェスタさんが居間を出る。
残される俺とお嬢様、そしてその叔父。
さて、まずはいい印象を与えないとな……。
俺はしっかりと『仮面』をつけなおすと、すっと目を細めて二人の方に向き直った。
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