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昼下がり。
組織から新しく与えられた部屋を出て繁華街を歩く。
「…ここも賑やかだな」
1ヶ月前に住んでた繁華街もこのくらい賑やかだったことを思い出す。
「ん?」
ふと公衆電話が目に入った。
ここはカレンの住む町から離れすぎている。
会いに行くと約束したのに、結局それは果たせていない。
俺は公衆電話の受話器をとると、小銭をいれ、彼女の屋敷の番号をダイヤルした。
『はい、もしもし』
電話口から女の子の声が聞こえてくる。
「カレンか?」
『…尊さん!?』
「ああ。なんだ、退院できたんだな」
屋敷にすでに彼女が戻っていることに安堵する。
『うん!…尊さん、会いに来るっていったのに…』
「…すまん。だから電話したんだ」
『声だけじゃなくて顔も見たいよ…』
「悪いな。でもちゃんと時間がとれたら会いに行くから」
『…ほんと?』
「ああ。そうでなくてもまた電話はするさ。…時間がないから、これで」
『ん、わかった。私、待ってるからね!』
最後の言葉を聞いた後、受話器を置く。
「…ままならないもんだな」
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