第Ⅳ章 塗りつぶされる魂

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「いいの?ほんとにいいの?」 少女は期待に満ちた…でもどこか不安そうな瞳で俺を見上げてくる。 「ああ。俺は結構金持ちだからな、お前一人養うくらいわけない。」 これは事実だ。組織からはいる金は膨大なのだ。俺一人じゃ使い道がないほどに。 「ただし、今後は無闇に人を殺さない、傷つけない、これを守れるならな。」 「守る!守るよ!ありがとう、お兄ちゃん!」 「おっと。」 ガバッと抱きついてくる。 ああ…そう言えばしばらく人の温もりに触れてなかったなあ。 「で、おまえの名前は?」 少女の頭を撫でてやりながら尋ねる。 「私はルル!みんなルルって呼ぶの!」 「ルルか…。覚えやすい名前で結構。俺の名前は…」 俺の名前…そうだ、俺の名前は…。 「? お兄ちゃんの名前は?」 「…俺の名前はクロウだ。さ、車に乗せてやるからついてこい。」 立ち上がりながら答える。 そう、俺の名前はクロウだ。 そうだよな、レン。
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