エンドレス鬼ごっこ2

3/13
前へ
/13ページ
次へ
「げ、おれ今日のバイト閉店までだ」 「お前いつやるんだよレポート」 「閉店二時だから帰ってすぐにやるっきゃねー…え、間に合うんかこれ」 「しらねー。けど落とすなよ、あんなつまんねー授業二回も受けてどうすんだ」 「だよな。資料だけパクらせて」 「ノートごと貸してやるよ、まとめてあっから。まんま書くなよ」 「うっわ…、神!」 「この前朝早くにたたき起こしたおわび」 「あーあれな、忘れてた。別に気にすんな」 「…わりーな」 「お前その話蒸し返すと暗くなっからいいって。でもノートはしっかり借りる」 「好きに使えよ、煮られても焼かれても困るけどな」 「心配すんな、コピーしておれみたいな状況の奴に売るかもしれないが」 「サイテーな友達持っちまった…」 加藤はいいやつだ。 早朝四時に突然加藤のアパートを訪ねても、「おほー、おまえ早起きな」と言って中に入れてくれるくらいには、いい奴だ。 そのあとも、軽口混じりに理由を聞いては来たが、おれが黙ると二度と聞かないくらいには、いい奴だ。 あの日は、部屋には帰らなかった。 帰れなかった。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加