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「げ、おれ今日のバイト閉店までだ」
「お前いつやるんだよレポート」
「閉店二時だから帰ってすぐにやるっきゃねー…え、間に合うんかこれ」
「しらねー。けど落とすなよ、あんなつまんねー授業二回も受けてどうすんだ」
「だよな。資料だけパクらせて」
「ノートごと貸してやるよ、まとめてあっから。まんま書くなよ」
「うっわ…、神!」
「この前朝早くにたたき起こしたおわび」
「あーあれな、忘れてた。別に気にすんな」
「…わりーな」
「お前その話蒸し返すと暗くなっからいいって。でもノートはしっかり借りる」
「好きに使えよ、煮られても焼かれても困るけどな」
「心配すんな、コピーしておれみたいな状況の奴に売るかもしれないが」
「サイテーな友達持っちまった…」
加藤はいいやつだ。
早朝四時に突然加藤のアパートを訪ねても、「おほー、おまえ早起きな」と言って中に入れてくれるくらいには、いい奴だ。
そのあとも、軽口混じりに理由を聞いては来たが、おれが黙ると二度と聞かないくらいには、いい奴だ。
あの日は、部屋には帰らなかった。
帰れなかった。
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