最初の記憶

2/3
前へ
/44ページ
次へ
もしかしたら、それが最初の記憶という事になるのかも知れないけど、私はとてもよく覚えている。 中が空洞のプラスチックの四角い箱で、側面に木とか、星とか、ハートとか、×とか、○とか、とにかくそんな型に穴があいていて同じ形の破片をそこから中に入れる、という《乳幼児の知能と運動能力と自発性を高める》らしい教育的なオモチャだ。 電車でデパートまで行ってそれを買ってもらって帰ってきた時の事も覚えている。 夏で、改札口のわきの木造の待合室で私はお母さんと並んで腰かけ、足元においてある包装されたそのオモチャをチラチラと眺めている。 お母さんの日傘がそのわきに立て掛けてあった。
/44ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加