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私は知らず知らずに唇に指をあてる。 思い出すのは、さっきの唇の柔らかな感触。 引っ張られたときの少し痛みの残る腕の感覚。 「あーもぉっ‼」 思い出して赤くなる自分に腹がたって頭を横に振りまくった。 「だいっきらい‼」 車内の乗客が私に冷たい視線を送っていることによくやく気付き、私は口を閉じた。 次の日――。 「ねー‼昨日のかっこいい男の人誰なの⁉」 「ほんとめっちゃかっこよかったー❤彼氏⁉」 「うわー一姫もなかなかやるのね😆」 「それにしてもあのキス💋羨ましー😭」 私の席の周りには、普段あまり話をしたことのないような女子までもが寄って来て、凄まじいことになっていた。 男子は冷ややかな目で私を見る。 完全に軽い女だと思われてる💣 完全に馬鹿にされてる‼ 男に馬鹿にされるなんて😱 「いい加減にして‼あいつとはなんにも関係ないの💢知り合いでもない‼勝手な想像で冷やかさないで👊」 私は囲む群れをかきわけて教室を出た。 「一姫‼」 香織の叫ぶ声が聞こえた。 私はそれでもかまわず廊下を走り続けた。
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