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「彼女だろう、秀弥? 高校でもお前にサッカーをやるように言ったのは」
「……おや……気付いて……」
「隠していたつもりだろうけど、汚れた衣類やお前の生活態度の変化を見れば分かる。それに全国へ行って、テレビにも出ていただろう?」
「……そりゃ、まぁ……そうだけど……」
中学最後の試合。みっともない姿を親父の前に曝したことがトラウマになって、高校でサッカーをやり直したことは、ずっと黙ってた。
まともに会話もしねぇから、知らないもんだと思ってたけど……意外と見られてるもんなんだな。
「お前は変わったよ。人として成長した。親が干渉しないところで葛藤し、乗り越えたんだと日々思っていた。その転機がなんだったのかは、今日、こちらのお嬢さんを見てすぐに分かった。気持ちが穏やかになったのは、彼女に感化されて、いい影響を受けたんだな」
「……と、と、と、とんでもないですっ……むしろ、先輩に感化されて、たくましくなったのは私の方で……っ……」
「いやいや」
「……いえいえっ……」
突如始まった、譲り合い合戦。
なんか、俺、今……めちゃくちゃ恥ずかしいんだけど。
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