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この2人のやり取りも今日で見納め。
オニ先輩は嫌がる北見先輩を後ろから抱き締めて、お構い無しに頬っぺたにキスした。
湿っぽい出発になることを心配してたけど、ロビーの中央で笑いに巻き込まれてる俺たちには、いらない心配だったみたいだ。
「まったく……あのテンションを見ているだけで、出発前から疲れるわ……あれじゃ、木野稔とは似ても似つかないわね」
オニ先輩のヴァイオリンの先生と会ったのも、この時が初めてだった。
毛皮のコートを着たセクシーな女先生。比奈は面識があるのか、遠慮がちに頭を下げて言葉を交わしてた。
「……那衣先輩の先生だったんですね」
「……あの時はどうも。やっぱり血は争えない……さすが、白鳥いずみの娘ね」
「……はいっ」
比奈が笑う。何の不安も、心配もないって顔で。
荷物はキャリーバッグ1つ。「必要なものは向こうで買う」って、オニ先輩と話し合って決めたみたい。向こうでは2人でルームシェアして暮らすみたいだから、その点は俺も安心してる。オニ先輩だったら、比奈の無理を止めてくれるって分かるから。
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