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マグロアールは息をのみ、怯えたようにその場に立ちすくんだ。
ミリエル司教は穏やかな優しい眼差しをバルジャンに向けた。
そんな扱いをされたのは久しぶりのことだったので、バルジャンは焦ってしまい、気が狂ったように早口でしゃべりだした。
「私はジャン・バルジャンという者ですが、ツーロンの刑務所に19年入っておりました。
4日前にやっと刑をすませて出てきたのです。
ツーロンからここまで歩いてきたのでもうくたくたです。
役所で囚人だったしるしの黄色い通行券を見せたために、どこもかしこもも口をそろえて私が泊まるのを断ったのです。
ここは宿屋ではなさそうですが、泊めてもらえませんか。
金なら持ってます。
刑務所で働いて貯めた金が109フランほど…」
司教はバルジャンを制止するように手をあげると、マグロアールに言った。
「マグロアール、夕食をもう一人分用意なさい」
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