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「そんなところで何をしてらっしゃるの?」
教会から出てきた年配の婦人がバルジャンを覗き込む。
「見てのとおり、寝てまさ」
バルジャンは投げやりに答えた。
「なぜ宿屋に泊まらないのです?」
婦人は優しく問いかける。
「あいにく金がないもんでね」
「私もあまり持ち合わせていないの。でも、あるだけあなたに差し上げますわ」
婦人は小銭入れを取り出し、バルジャンの手に銀貨を2枚握らせた。
「これだけでは宿屋には泊まれませんわね。でも、頼めば泊まらせてもらえるかもしれませんわ」
「もう何軒も回ったよ。どこも門前払いだ」
「あの教会にはもう行かれました?」
「いいや」
「あそこでしたら、一晩泊めてもらえるかもしれませんよ。行ってごらんなさい」
バルジャンはもらった銀貨を握りしめる。
「『求めよ、さらば与えられん』聖書の一節です」
婦人は微笑み、去っていった。
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