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「桜と霞はいつから二重人格なんだ?」
俺は桜に問う。
「うーん…
いつからだろ。
物心つくころには、すでに私ともう一人の私……霞はこの体の中にいたの。
どっちが本物なのか、もしかしたら最初から私たちは二人で一つだったのか…
わからない」
桜は言う。
そのセリフの中で俺が気になった一つの単語。
それは…
「俺、思うんだけどさ、桜と霞、どっちかが本物だなんてことはねーだろ?
桜も霞も、今を生きてんだよ。
どっちが最初だなんて関係ねぇ。
生きている限り、どっちも『本物』でいいんじゃねーか?」
「どっちも『本物』…
…そっか、そうだよね!」
「おう、あんまり難しく考えんなって。
せっかくの人生、楽しまなきゃ損だろ」
「和生は楽でいいね。
そうやって全部簡単にできちゃうんだもん!!」
「…それって褒めてんのか?」
「もちろんだよ」
そう言って桜は声を出して笑った。
静かな教室に澄んだ笑い声が響く。
俺もつられて一緒に笑った。
胸が高鳴る。
桜の顔を見ているだけで。
桜の声を聞いてるだけで。
もっと、ずっと、一緒にいたいと思う。
やっと理解できた。
久しぶりのこの感じの正体は、『恋』ってやつだ。
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