2818人が本棚に入れています
本棚に追加
二人きりの時間も、もうすぐ終わるだろう。
それまでにもっと桜と話をしておこう。
俺の胸のドキドキはおさまるどころかさらに大きくなっていくが。
「桜と霞って記憶とか、どういう風になってんの?
霞ん時の記憶も桜にあるわけ?」
「うーん、霞の時の記憶はほとんどないかな。
夢を見て、その夢を忘れちゃった感じ。
ほんの少し、イメージだけなら残ってるけど…」
「ふーん、でもそれって不便じゃねーか?
いろいろ大変じゃん」
「もう慣れちゃったよ…」
まただ、また桜は寂しそうな顔をした。
俺と話している時に見せる寂しそうな顔。
俺はその理由を分かってやれないし、助けてやることもできない。
そんな自分がすごく歯がゆい。
今の俺にできるのは桜にそんな顔をさせないように、話をふることだけ。
俺の中で桜がどんどん大きくなっていく。
一言、言葉を交すたびに、
一つ、桜の新しい表情を見るたびに、
どんどん大きくなっていく。
桜の笑顔が俺の心を支配していく。
もうダメだ。
どうやら俺は完璧に桜のことを好きになっている。
最初のコメントを投稿しよう!