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もちろん誰一人として、挙手するヤツも起立するヤツもいない。
みんな何くわぬ顔で沈黙する。
ったく、これだから面倒なんだ。
正直に言えつうの。
わざわざ本人に聞こえるくらいのでけえ声で悪口言ってたんだろ?
あー、いらいらする。
「あれ、恭也君、不思議ですねえ。
あれだけ悪口が聞こえてきてたのに、言った人はこの教室内に一人もいないみたいですよ?」
俺は恭也に向かって言う。
「はあー、うぜえな。
さっさと出てこいっつうの。
名前呼ぶぞ?」
恭也はそんなことを言いながら手に持っていた弁当を元が倒した机とは違う机の上に置いた。
それでも沈黙を守りとおすクラスメイトたちに、うんざりする。
ガンッ
その時、元が自らが蹴り倒した机にもう一発蹴りをいれた。
「俺は筋を通さないヤツは嫌いだ。
文句があるなら、直接言えばいいだろう?
さあ、この子に文句があるのだろう。
早く言えばいいじゃないか」
元は力強く言った。
しかし、教室の沈黙は深まるばかり。
「てめえら、次に陰で桜の悪口言ってみな。
ただじゃ済まねーぞ」
俺はそう言うと席に座り、弁当を食い始めた。
どうせこれ以上待ったって誰も出てこねーさ。
俺のいらいらは解消されることもなく行き場を失い、空気中を漂う。
恭也と元も渋々ながら自らの席につくと弁当を食い始めた。
それから、ゆっくりとではあるが教室にいつもの姿が戻っていった。
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