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俺は学校の校門の手前で桜の姿を発見した。
今日はついてるぜ、俺!!
桜は俺の数m前を歩いている。
「おーい、桜ー!」
桜に呼びかけてみるものの、振り向いてくれる気配はない。
聞こえなかったのかな?
俺はちょっと歩むスピードを上げる。
「桜ってばー!」
さっきよりも近い位置からの呼びかけ、これにも桜は何の反応を示さない。
なんかちょっと寂しいというか、切ないというか、そんな気持ちになる。
「おい、桜ってば!
無視すんなよな」
やっと桜に追いついた俺は、桜の肩に手をポンと置きながらそう言った。
「人違いじゃない?
私は桜なんて名前じゃないから。
それと、馴れ馴れしく触らないでくれる」
桜は、いや……霞は、肩に置かれた手を払い、俺に目を向けることもなくそう言った。
はぁー、そうだった。
コイツがいるのをすっかり忘れていた。
俺は手を払われた姿勢のまま静止する。
霞はそんな俺を気にとめることなく、すたすたと去っていってしまった。
……失敗に嘆いてばかりではいけない。
そもそもアイツをなんとかしないと、桜がクラスに馴染めなくなる。
俺は砕けた心の欠片を急いで拾い集めると、すかさず霞の後を追って教室に向かった。
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