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ちくしょー、このままでは霞を霞と呼べない。
さっき霞の意見を無視して呼んでみたところ…
すかさず辞書で側頭部を強打されました。
しかも、辞書は箱入りでした。
さらに、霞には手加減や情けなど一切ありませんでした。
次に霞って呼んだら、多分そこで俺は自らの人生の幕を降ろすことになるでしょう。
俺はまだズキズキと痛む側頭部をさすりながら霞との交渉を続ける。
「なんで霞って呼んじゃダメなんだよ?」
「私とアンタは他人。
仲良くする気もないの。
私は一人が好きなの。
だからよ。わかった?」
「全くわからん。
一人が好きなら、なんでそんな寂しそうな目をしてんだ?」
「寂しいだなんて…思ってない。
アンタが勝手に勘違いしてるだけ」
「ふーん、勘違いねえ…」
「そう勘違い。
だからもうほっといて」
「嫌だ。
俺は霞と…ガハッ」
本日二発目の辞書アタック…
違うんだって…
今のは事故なんだって。
霞は辞書を手にしたまま俺を睨む。
「俺は、君と仲良くしたいだけなんだって」
俺が頭の痛みに耐えながらそう呟いた時、霞の表情が一瞬だけ変わった気がしたんだ。
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