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  昼を過ぎた頃、今だ空は暗い。 ゆっくり降り続く雪はしばらくやみそうにない。   縁夜は朝方と同じように縁側から外に出ていた。 降りゆく雪は雨人形の手足に付くも、ゆっくり溶けていく。   「…………」   少し水滴が付いた手を見つめ、しばらく空を見上げるのを止めて、周りを見渡した。   広い和風の庭。 雪が降り積もった灯籠。 小さな湖。   その時、縁夜は湖の側に小さな人を見つけた。   「誰だろう……?」   キシキシと音を鳴らしながら、縁夜は人が見えた方に歩く。              「……グスッ…グスッ」   湖の岸には、白いワンピースを着た、ショートヘアーの女の子が泣いていた。 身長や顔立ちからして8~10歳ぐらいだろう。   「どうしたの……?」   もう、周りが聞こえていないように女の子は泣き続ける。   どうしようもない縁夜は女の子の頭を撫でた。 樫の木で作られた、到底人の手とは感じられないモノで撫でられて、女の子は人形の存在に気付いた。   「……おにんぎょうさん、はくはつのきみをしらない……?」   「白髪の君?それは貴女のお知り合い?」   「とてもたいせつなひとなの………かれがいないとわたしは……はくはつのきみはどこにいるの…」」   そして再び泣き出した。 縁夜はどうすることもできず、ただ女の子の頭を撫で続けた。     「どうした、縁夜」   「あ、右京」   振り向いたら若い僧がいた。   「右京は白髪の君を知らない?」   「…白髪の君?それは一体誰なんだ?」   「この子の大切な人らしいよ」   右京は泣き続ける女の子を見て、悲しむように目を細めた。   「女の子………白髪の君は湖で君を待っているよ」   「みずうみで……?」   「目を閉じて、湖を思い浮べてごらん。白髪の君は待ってるよ」   女の子は右京に言われたように、目を閉じて、湖を思い浮べた。 すると、女の子の姿は砂が風に吹かれるように消えていった。   「………右京。女の子はどうなったの?」   「在るべき場所に帰ったんだ。女の子は、ある意味迷い子だったんだ」   「女の子は迷子だったの?」   「それとは違うけど……似たようなものかな」   苦笑いをしながら、縁夜の頭を撫でる。   「縁夜には難しいことはわかりません」   雪が降る中、二人は湖を眺めた。     湖の中心で白髪の男の子と小さな女の子が寄り添うように水面に座っているのを。
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