~魔法~

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 たしかに、 祖父についての記憶は、 実にあいまいで、 断片的にしか覚えていない。   その少ない記憶も、  なぜだか非常に抽象的で、   はっきりと思い出せないのは、     自分が、 あまりに幼かったせいだと……     今まで気にも留めずに、日々を過ごしていたのに、 こんな状況でいきなり、  祖父の失踪は自分のせいだ なんていわれても、 いまいちピンと来る訳がない。     「今が選択と言う試練の時だ」  どこかで聞いた台詞が響く。      「何を選べというんだ?」   「生か死か、    このまま 朽ち果て     死に逝くのか、  生きる為に もがき   すべてを受け継ぐのか、  残された時間は、      あと わずかだ」   もちろん、  このまま終わるだなんて、    真っ平ごめんだ!  まだまだ やりたいことは、山の様にある、いきなり このまま終わりだなんて、後悔しきれない!!      「もちろん生きたい!」     力の限り叫んだ。     真っ白な空間に吸い込まれて行くように声が消えて行く。    ふと、 鼻孔をくすぐる懐かしい匂い。   おじいちゃん? 目の前の暗闇が、うっすらと、祖父の姿を映し出していた。  
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