~貴石~

3/6
6人が本棚に入れています
本棚に追加
/38ページ
「……オレは   生きているんだな」      まだ 夢と現実が 混ざり合っている、頭と気持ちを、 落ち着かせながら、ゆっくりと思い出す。 「生きるんだと願うココロ、 生きたいと思う意思の力か」       ゆっくりと、  辺りを見渡そうと、  身体に力を込める。 勢いよく流れだす血流と、 みなぎる力に耐え切れずに、 筋肉と関節が、軋む様に悲鳴を上げる。     「っく……あうぅっ     痛ってぇ~っ」 心臓の鼓動に併せて頭の奥まで痛みが響き、軽いめまいに襲われる。    体に掛かる、 薄い布団をのけながら、 痛みを堪えて身を起こす。      「っふう~ ぅ」  絞り出すように 肺の空気を入れ換える。  痛みのせいか、思ったほど呼吸が上手く出来ない。     周りを見る限り、あの黒い奴はいないようだ。    ちょっと、動いただけで、途方もない疲労感に見舞われる。     額にうっすら浮かんだ汗を拭おうと、手を意識した時に、    あらためて、 握り締めた2つの石が、夢と現実の壁を崩した。  
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!