~貴石~

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どれくらいの時間そうしていただろうか?   いつまでたっても変化が起こらない事に、逆に不安がつのる。     (ここは本当に、病院なんだろうか?)   沸き上がる疑問と緊張により、さらに渇いた喉が、オレに決意を促す。   まだ混乱してはいるが、 今は、ナースコールを探して押すよりも、自分の脚でここから出てみたかった。     なにより、ひどく喉が渇いている。     ダルい痛みと、 頭痛に逆らうように、 ベットから身を乗り出し、 履物を探してみたが、 床の白いフロアタイルの上には、埃ひとつみあたらない。      「まぁ、いいか」 自分を納得させるようにつぶやき、ベットの端まで移動する。    しかし、 普段は気にも留めずに、 無意識に、それこそ自然に行っている事が出来ないもどかしさに、焦りと苛立ちを感じながら身体を動かす。   左腕に刺さっている、この部屋に、最後まで繋ぎ留めようとしている点滴の針に、 そのストレスをぶつけるように、引き抜く。    鋭いイタミが走る。   ボタボタと針先から溢れしたたる黄色い液体と、 ゆっくり染み出すように流れ出した血液が、 真っ白なベットに染みを作って行く。   うまく力が入らない脚を進める前に、 ベットに転がる石を拾い、 強く握り締めると、不思議に痛みがやわらいでいく気がする。  
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