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リーは悩んでいた。
どうすれば、あの龍の足元に咲く赤い花を手に入れる事ができるのだろうか。
龍は眠らない。
いつもあの金色の目を見ひらいて、三日月の様に鋭い瞳でこちらを睨んでいる。しかし、口元は嗤っている様に見える。
リーの恋人ノーラは、重い病を患っている。
医者からも打つ手は無いと言われた。
だが、この村にはある一つの伝説がある。
「龍が嗤う丘に咲く髑髏模様の赤い花、それは全ての願いを叶えてくれる。ただし、手に入れる事ができるのは500年に一度だけ。」
今年はちょうど、前の願いが叶えられてから500年になる。
リーの他にも自分の願いを叶えるために、あの丘へ行こうという者はたくさんいた。
しかし、村長はリー以外の者達の挑戦を止めた。
リーにこそ、挑戦する権利がある。
そう言って、村長はリーの旅立ちを見送った。
あの丘まではかなり遠い。
村のどこからでも、あの龍の目が見えるのに、実際に近くまで行った事のある者はいない。
恐らく、あの龍は途方もない大きさなのだろう。
そして、あの足元にある花も…
龍の元に着いた頃には、リーは間近で見るその姿に圧倒された。
これは…生物ではない。
そう感じた瞬間、巨大な赤い花の「内部」から幾人もの鎧を着けた人間が現れ…
リーが村を出て数年後。
村ではノーラの子供達がはしゃぎ回っていた。
それを見るノーラに村長が話し掛けてきた。
「リーは今日も、お前と子供達を見守っておるな。ごらん、こちらに気付いて笑ってるよ。次に龍になるのは、この子らの子孫じゃな。」
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